2010年11月28日

ほんとうに人間はいいものかしら。

秋ですね〜(いや冬です)本が読みたくなる季節です。
わたしは読書は好きですが、色々試してみたも結果、どうも好むジャンルがすごく狭いのだということを再認識しました。
エッセイや書店で平積みされているような話題の本などはちょっと苦手なものが多いです。
いわゆる文学作品や歴史小説と言われるような少々固い作品やどこか悲哀を感じさせる童話が好き。伝記も大好きです。
一番たくさん読書していた小学校〜中学校時代の図書カードは、たぶんそんな作品ばかり並んでいたんだろうなと思います。

子どもの頃の読書量が大人になってからの思考や表現力、社会性に大きな差を生むことは、いまさらここで言うまでもなく広く知られている事実だと思いますが、自分の実感としても大人になってから読書は知識としての幅を広げるのに対し、子どもの頃の読書は、人間の幅、深みに大きな力を持っていたことを強く感じています。だからこそ子どもの時、多少難しくても良書に触れる必要だとも思っています。


わたしが初めて購入した本はポプラ社から発刊されていた「若草物語」でした。
夏休みのラジオ体操の皆勤賞に、子ども会から500円分の図書券が貰えたのです。その図書券を持って、町の唯一の本屋さんだった“みやこやさん”で何を買うか真剣によくよく吟味したのを今でもよく覚えています。
まだ小学校1年生だったので漢字なんてほとんど読めないし、でも大人と同じ本(と子どもの頃は思っていた!)を初めて自分のお小遣いで購入できるっていうことに興奮しましたね。
ポプラ社の本を選んだのは、たぶん母から入学祝いに買ってもらった本が同じポプラ社の「野口英世」だったからだと思います。
わたしは分厚い本を2冊も持っている!って、ものすごく大人の仲間入りをした気分でした。
「野口英世」は読むのに1年近くかかったと思います。母が読めない漢字に仮名をふってくれるのを待ちながら少しずつ読んでいたので。
「若草物語」も時間がかかったような・・・。でも姉妹の物語が自分の家族と重なって、ホントに楽しく何度も何度も読み返したものです。
それから毎年図書券で本を買うのが夏休みのご褒美のようになっていきました。
高価で購入できない本は、図書館の先生にリクエストして購入してもらったこともあったなあ。確かそれで読んだのが「アンネの日記」。

小学生の頃、将来は童話作家になりたいと思っていたものでした。
アンネに感化されたのもありますが、当時のわたしは童話や児童文学が本当に大好きで、特に新美南吉や宮沢賢治に憧れていました。
彼らの作品は鮮やかな情景が浮かんでくる作品ばかり。やさしくて愛情に溢れ、また人間に対する皮肉とも取れる厳しい一面を持った、子どもに向けた作品であるにも関わらず、大人の鑑賞にも応える本物の文学だと思います。
そして挿絵もまた素晴らしいのです。子どもに媚びたような安易な絵付はされていません。対象が子どもだから、に転ばない、一人の人間の感性に訴える、独自の想像力を邪魔せずに個性を育むことが出来るような、そんな挿絵が入った本が多かったのです。
子どもの頃にはそんなことまで感じてはいませんでしたが、いま読み返すとわたしはそのような本が大好きだったなと思います。


今日のブログ記事のタイトルは、新美南吉の「てぶくろを買いに」の中で母狐がつぶやいた言葉です。
この作品は新美作品の中でも有名ですし、ご存知の方も多いことと思います。無邪気で無垢な子狐がホントに可愛らしい。全文暗誦できるぐらい読みましたから、今でも一つ一つのセリフが思い浮かびます。
お母さん狐が子どもの頃に人間に酷い目に遭わされた経験があって、トラウマになってるんですよね。だから自分が町に入るのが怖くて、でも可愛い子狐にはあたたかい手袋を買ってあげたいって思ってる。
心配で仕方がないけれど、子どもに自分で手袋を買いに行かせることにしたお母さんの気持ちはどんなに迷いがあっただろう・・って今は思います。
何も知らない子狐が間違えて狐の手を出してしまったのに手袋を売ってくれた人間に対して「ちっとも怖くなかったよ」って言うんだけど、子どものわたしは、子狐の気持ちで読んでたんだなあ、って思いました。
お母さんの最後のつぶやきの意味なんて考えたこともなかったなあ。

手袋屋さんはお金が本物だったから手袋を売ってあげただけで、相手が狐か人間かなんて関係なかったんだろうな、なんて大人になった今のわたしは思ったりしています。
だけど子狐は手袋屋さんのことをちっとも疑問にも思わず、狐の手を出してしまったのに手袋を売ってくれたよ、怖くなかったよって素直に思ってる。ただ人間のお母さんが優しく子どもを寝かしつけるのを見て、お母さん狐が恋しくなって急いで帰るの。
なんて素直で可愛らしいんだろう。そしてお母さん狐と同じように感じてしまうのです。


ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら。
posted by USA at 18:08| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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